地球へ・・・二次創作パラレル小説部屋。
青爺と鬼軍曹の二人がうふふあははな幸せを感じて欲しいだけです。
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テラ最終話後の甚だしい妄想③
読み終えた絵本を手元に置いて、一人になったベッドの上、僕は張り詰めていた糸を切るように、大きく伸びをした。トォニィは健気だ。良い子に育っているよと、思いを口にする。それから僕は、彼の名を呼んだ。
「・・・・僕らは大人、らしいですよ、ブルー?」
いるんでしょ、出てきたらどうです。ばればれですよ。幸いにもトォニィは気がつかなかったようだけれど。思念、洩れすぎです。力のコントロール、下手になったんじゃない?
「君が彼からグラン・パと呼ばれるのなら、僕にとっちゃ、彼は曾孫も同然だよ。いや、もっとか。曾々孫?可愛い曾孫のしょぼくれた様子に、心配しないはずがない。」
その割には、楽しんで覗き見してたみたいな気がしますけど。
ジョミーはカーテンの後ろからのっそり出てきたブルーへと、呆れ返った視線を向けて溜息をつく。
「あなたって、どうしてそう、覗き見するのがお好きなんでしょうか。」
「おや、人聞きの悪い。僕がいつ、誰を覗き見していたって言うんだい?」
首を傾げ、目をぱちくりさせる姿は実に愛らしい。わざとやっているのだろうか、きっとそうだ。彼は自身の容姿を熟知している。ついでとばかりに上目遣いで此方を見る。
今は同い年の小さな彼を、思わずどこかへ連れ去り閉じ込めてしまいたい衝動に駆られる自分に、ジョミーは舌打ち一つ。悟られぬように、照明の下、青の間の主に相応しい雰囲気を纏う少年から、少しだけ目を逸らした。
「かつてのあなたが、ですよ。ソルジャー・ブルー。あなた、暇さえあればアタラクシアの僕の元へ思念体で来てたでしょう。知ってるんですよ。当時は分かりませんでしたけど。シャングリラに来てから暫く、よくよく考えたらあれは、あなただと。思えば物心ついた頃から、あれ?僕、誰かに見られてる?、とかずっと思ってましたよ。あれ、あなたでしょ。・・・・まったく、よくハーレイが許してましたね。」
つらつらと言葉を並べながら、気持ちが落ち着いてきた頃を見計らい、ジョミーは再び、ブルーで視界をいっぱいにした。彼は当たり前のように、真正面から自分を覗き込んでいる。あまりの近さにちょっと仰け反った。座ってくださいよ、とトォニィにしてやるのと同じように自分の隣を示して、二度、敷布をたたく。
言われるままに、しかし、トォニィとは逆の位置で自分のベッドに腰を降ろしたブルーは、大人しくしているかと思いきや、ジョミーを巻き込みそのまま後ろへ倒れ込む。体が白い布団の上に沈んだ瞬間、ジョミーは馬鹿らしくなって、全ての考える力を放棄しようと思った。
「ブルー。何するんですか。頭、打っちゃいましたよ。」
「ベッドの上で?」
「ええ、やわい、あなたの胸で。」
「それはすまない事をした。」
「いいえ、別に。気にしてませんから。ブルーこそ、痛くなかったですか。」
「ジョミー、投げやりの気遣いは遠慮するよ。」
「奥ゆかしい人ですね。」
「ありがとう。」
花がほころぶ様な微笑み。彼にぴったりの表現だろう。実際、花よりも芳しい少年の笑顔は誰をも魅了するだろう。
思えば彼の笑顔を、自分は数える程しか見ていなかったような気がする。なぜなら、気がついたら彼はいつも眠っていたのだ。長い睫が伏せられた寝顔ならば、幾度となく眺めてきた。彼の側にあらば何か、そう、何かが見えるような、分かるような気がしたから。彼の寝顔ですら、自分は導かれ、そして安堵した。
青の間は自分にとって、たんなる聖域ではなかった。皆が口をそろえて青の間は神域だと、聖域だと自分に告げていたあの頃、まだまだ新米ソルジャーの己は、何かあれば、青の間へ、彼の枕元へと駆けて来た。逃げ出してきた、というべきだろうか。そう、今のトォニィと同じだ。思えばあの頃から「ソルジャー」にとって、ここはなくてはならない場所だったのだ。
ふと、では彼は、と思い当たる。
かつての己には、ソルジャー・ブルーという絶対的な存在があった。
トォニィには、今の自分が、彼の思う心のよりどころとして存在する。
では、彼は。
ブルーには、誰が、どこがあったのだろうか。
フィシスか。彼の女神がそうなのか。
隣に顔を向ければ、ブルーは昔のように、目を閉じている。眠っているのだろうか。いや、そうではないだろう。何か、考えているに違いない。彼は思案する時、目を瞑る癖がある。
手を伸ばし、ブルーの顔に掛かる前髪を掬い取る。初めて出会った頃とまったく同じ、ソルジャー・ブルーのような銀色になった彼の髪は、しっとりとした質感を持ち、己の手の中にそっと身を横たえ、静かに時を過ごしている。
ソルジャー・ブルーには、何が心を休めてくれていたのだろうか。否、そんな気持ちが入り込む心の隙間など、ありはしなかったのだろうか。
思念を巡らし、靄の中、水面に舟をこぐ。
ゆたり、ゆたり。
ぼう、と意識が薄れていく。
頬にあたる静謐な冷たさは、どこを目指して往くのだろう。
は、と息をついた時、青の間の空気が流れを変えた。
混濁した思考の合間、手の中の白銀を取り零す。仄かに青白く輝くシーツの波に、銀の筋が幾重も流れ、その向こう、現れた瞳の青さに息を呑む。
虚を、つかれた。
その青い一粒の宝石は、ただそこにあるだけで、己の全てを飲み込んでしまう。圧倒された。それは、もはや彼の瞳ではない。これは、彼ではない。彼であって、彼ではない。己の視界に映るのは、澄み渡った青い色。美しい、その青は。
ああ、そうか。
そうだった。
それこそが、そうなのだと、己の未熟な頭は当たり前の真理を見る。彼の心はいつだって、一途だった。忘れていたわけではない。そうではないけれど、別の何かであれば良かったのに、と思わないわけでもない。それが、自分であったら良かったと?傲慢にも程がある。彼は長い月日を生きていたのだ。いつだって彼を支え、彼を癒し、彼を追いつめ、彼を導いてきたのは、たった一つしかない、それに決まっているではないか。
そうだと理解はしても、僕はそんな彼の心を、一人の人間として、少しばかり哀れにも思う。理由など、分かるものか。今ですら、彼は心に熱い塊を持っている。
青き色。青い星。
テラ。我らの産土を抱く、母なるテラ。
遥かなる憧憬を胸に焼き付け、今も変わらず還れと、テラへ還れと囁く声。大いなる地球。
手を伸ばそうと、動かすけれど、ちっとも動かぬ体に憎悪が走った。求める道はそこにある。そこにあるのだ、と叫ぶ声。
「ブルー。」
二度目、眺めた瞳はもう、紅い色。
向かい合う彼の紅い瞳の中で、緑の瞳がこちらを見つめている。それは紛れも無い、己の眼だと、自覚してからようやっと、体を這う血流を通して、力が命を取り戻す。
そろそろと彼の頬を両手で包み、額をくっつけ囁いた。
「一緒に。一緒に、テラへ還りましょう。」
「ジョミー。」
「生きて、」
共に、還りましょう。
地球へ。
それが、あなたの変わらぬ望みだとするならば。
僕がいつだって。
「でも、ブルー。僕は、あなたに持っていて欲しいんです。」
「何を?」
「地球ではない、別の何かを。」
人としての、当たり前に持つ、生きる時間、感情、欲望。生々しい感覚。
「あなたは限りなく己の欲望に忠実だった。地球へのあなたの心は美しく、気高くそして醜い人の欲だ。命をとして、たった一つを希求するあなたを僕は愛した。けれど、ようやっと今、それを否定する事が出来ます。分かりますか、ブルー」
「分からないよ、ジョミー。」
「まったく、鈍感な人ですね、あなた。情緒がなさすぎですよ。ここは分からなくとも頷く場面です。」
「無理強いはよくない」
「あんたがそれを言いますか」
「すまない、」
「そう言えば何でも通ると思っていたら、大間違いですよ。」
「すまない、ジョミー、」
「吐息たっぷりで言ったって無駄です。第一、あなた今、子供の姿なんですよ。色気半減です。凶悪なほど、可愛いですけど」
「てへ。」
「もういっぺん、逝きます?」
「それは勘弁してくれないか。」
「ならブルー。楽しく、僕らと一緒に、同じ速さで。これからは生きていきましょうね。」
だから、一人で先に行ったりしないで下さい。後姿はもう、見たくありません。おいてきぼりなんて、絶対にごめんです。
「知ってます?あなたの横顔って、とっても奇麗なんですよ。」
「可愛いの間違いじゃないのかい?」
「いいえ、あなたはどんな姿でも、いつだって麗しいお顔立ちでいらっしゃいますよ。」
「ジョミーはとても、格好良いね。何だか、男前になった気がする。」
「苦労しましたからねえ。」
「年寄りくさい」
「あんたに言われたくないですよ、」
いつだって、僕の隣に居て下さい。
「・・・それだと、キースが一人ぼっちになってしまうよ。」
「ほんっとう、あんたって人は空気の読めない人ですね。わざとですか。たまには黙って、僕のお願い、きいてくださいよ。ブルー。」
僕は、もっと、あなたの横顔を堪能したいんです。
「だから。」
「ジョミー、君、けっこうタラシだね。不本意ながらときめいてしまったよ、」
「まあ、初代ソルジャー直伝の垂らし込み、ですからね」
ついでに、キースには僕の横顔でも堪能させますよ。僕って優しい。
「では僕は、せいぜい君のジョミーの横顔を味わい尽くそう。」
「ぜひそうして下さい。」
約束、ですよ。
約束。
20080113
そう、僕らは今も昔も、たった一つの約束を結ぶ事の出来る特別な間柄なのだから。
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