地球へ・・・二次創作パラレル小説部屋。
青爺と鬼軍曹の二人がうふふあははな幸せを感じて欲しいだけです。
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風が心地良かった。まろやかな甘さを含む風に、近くに何か、花が咲いているのかと見通しの良い屋上から周囲を観察する。最初に目に付いた中庭は、青々とした芝生の絨毯が実に見事で、思わず感嘆の声を上げた。中庭に面して張り出す露台を持つ教室がいくつもあって、それぞれに鉢植えや蔦が絡まっている。遠目でも分かる、隅々まで手入れの行き届いたそれらに、これからの学園生活を思って素直に胸が躍る。この中庭は、自分の気に入りになりそうだと思った。
「ま、この屋上もなかなかのものだけれど。」
てっきり生徒は立ち入り禁止になっていると思っていたが、そこはさすが私立というべきか、もしくは余程、学園側の安全管理に自信があるのか。あっさりと、むしろ、暇な生徒は皆、休憩しにおいでよ、と言わんばかりに屋上へ続く階段は当たり前のように最上階のフロアから続いていて、拍子抜けしてしまった。高等部を始め、中等部、初等部とがあるこの学園は、きっとそういった学年の垣根など存在せずに、自由に学内を生徒達が闊歩し、すべての教室を利用する事が出来る配慮もなされているのだろう。随分と、以前にいた学校とは体制の違うシャングリラ学園に、始めこそ驚いたが、今ではここへ転校してきて良かったと心の底から強く思う。この町に転勤が決まった父に、感謝だ。
「さて、転校生らしく職員室へ挨拶に行きますか。」
ここの教師や生徒はどんなものだろうか。品定めをするようなこの気持ちは、転校生ならではないだろうか。ちょっと意地の悪い遊びに興奮する心中を、乾いた下唇をなめる事で宥める。
「いや、その前に気になる事を解決する事の方が先かな。」
無視をしていたわけではないが、あえて気に留めなかったそれに、じ、と視線と注意を集める。
ビスクドールみたいだ、と思ったのは己が持ちうる限りの、美への賛辞だ。銀髪に白い肌は、そういった趣味の人間でなくても、ぞわりと首筋の産毛が泡立つ。危険な生き物だな、とある種の恐怖すら感じて、それに声をかけてやるかと顔を覗き込む。第一、生徒はこの時間は確か、身体検査ではなかったろうか。もしくは学級活動だ。こんな所にいていいはずはない。
「不良?」
それにしては、見目が良すぎる。麗しいそのかんばせは、見るからに、優等生タイプだ。
「サボりにしては、堂々としすぎていやしないか。」
「残念ながら、そうなんだ。」
「わ、口きいた。」
てっきり眠っているかと思い込んでいたそれは、その容姿に相応しい音色を奏でる。
「失敬な。喋る事ぐらい、いくらでもするさ。人形ではないのだから。」
「その顔で?」
「僕は人間だぞ」
そう言って、わざとらしい溜息をつく。ご立腹、といった気配を漂わせながらも、口元は笑んでいる彼は、目を瞑ったまま、起き上がる気は一つも無いようだ。このまま放ってその場を去る事も出来たが、何となく面白そうなので、彼の顔に影が差すところまで近寄り、更に言葉を投げかけた。
「僕の名前はセキ・レイ・シロエ。シロエって呼んでくれてかまわないよ。」
「何だ、随分と横柄な物言いだね。僕はブルー。無遠慮に呼び捨てればいいさ。さあ、存分にそうしたまえ、シロエ。」
「あんたも似たような物だろう。」
きゅ、と眉を寄せてさも面倒そうに彼は寝返りをうつ。そんな彼を見ていたら、立っているのも馬鹿馬鹿しくなって自分もその場にどかりと胡座をかいた。彼の白磁の肌が、直射日光に晒される。
「シロエ、君は何年生だい?僕は高等部の一年生だ。」
「奇遇だね、僕もこの学園の高等部一年さ。」
「ああ、君か。入学初日にE-1077で騒動起こして二日目にこのイロモノ学校に転校して来たのは。ようこそ、我がシャングリラ学園へ。」
「へえ、よく知ってるね。」
素直に驚いた。たいした情報網だ。
「他に知っている事は?」
「そうだね、セキ・レイ・シロエ君。君はとても優秀だけど、中でも機械工学が得意だね。ちなみに僕は幼少からの趣味が高じて算盤が得意になった。級持ちだぞ。それと君は小さい頃はピーターパンに憧れていたんだってね。それは僕も同意さ。空を飛ぶのは気持ちが良い。」
「・・・・君、何なの?」
どうしてそれを知っている。得意科目はともかく、自分ですら忘れそうになっていた、幼い頃の淡い思い出を、なぜ知っている。
風が、僕らの間を通り抜けていく。日光に晒される肌が、じりじりと熱を持ってきた。
人形のような彼の顔が、ぴくりと動き。
ぱち、と開いた瞳は紅い色。
「・・・・君、何なの?」
どうしてそれを知っている。得意科目はともかく、自分ですら忘れそうになっていた、幼い頃の淡い思い出を、なぜ知っている。
風が、僕らの間を通り抜けていく。日光に晒される肌が、じりじりと熱を持ってきた。
人形のような彼の顔が、ぴくりと動き。
ぱち、と開いた瞳は紅い色。
あまりの鮮やかさに言葉を失う。息を呑んだ瞬間を狙いすましたのか。少年は、さらっとこう言いのけ、暇だといわんばかりに首もとの赤いタイを指で遊んだ。
「だって僕、エスパーだもの。」
馬鹿いうな。
馬鹿いうな。
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