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地球へ・・・二次創作パラレル小説部屋。 青爺と鬼軍曹の二人がうふふあははな幸せを感じて欲しいだけです。



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もし、皆既月食が天気が悪くて見えなかった場合のジョミーさん。




 一人、暗闇の中に佇み暫くの事。もそりとポケットの中から僕は文明の利器を取り出した。
「・・・・・・あ、もしもしシロエ?僕だけど。うん。眉毛と一緒にさ、これから花火やらない?うん、そう。ぱっと派手にさあ、打ち上げ花火とかロケット花火とか、ウィリアムの家めがけて飛ばしてみない?うん。そうそう。・・・・キースに買わせてきたらいいよ。どうせあいつ、今日もマザーから残業もらって喜んでるんだろ。趣味悪。・・・・・・うん、そう、そう。え?他にも?そうだなあ・・・・リオとか、どう?ほら、この間、シロエに紹介した、うん。そ、飴ちゃんくれるお兄ちゃんね。・・・・・ああ、大丈夫。きっと持ってきてくれるよ。・・・・どうせリオにひっついて後、適当に何人か来るだろうから。え、サム?サムはどうせほっといても来るから問題ないよ。うん、それじゃあ待ってるから。よろしく。あ、チャッカマンと蝋燭、バケツも。うん。じゃ、後で。」
 買い換えたばかりの携帯電話は、世界最薄と宣伝文句がかかっているものだ。あまりに薄すぎて、どうも僕には勝手が悪い。ほら、今だってブルー色の二つ折り携帯電話を思い切り閉じて、どこかが割れたような音がした。
「・・・・正直、萎えたわ何かもう。」 
 次の皆既月食の時は、街中を照る照る坊主でいっぱいにしよう。
 今日は、隠れた月をおびき出すために、宴をもよおそう。これでひょっこり出てきた儲けだけど、まあ、無理だろう。それにそんな尻軽な奴はいらない。
 花火。真っ暗闇を、照らしておくれ。
 すべてを弾け飛ばして。
 爆発させておくれよ。









はい、という事で楽しみにしてました本日の皆既月食は見事、悪天候によりその姿、欠片すら見えず。ああ、残念。ちょっと、本気で萎えます。くそ。調子に乗って皆既月食をテーマに小説まで書いたのに。うあー、やっちゃったよーやっちゃったなー、みたいな感じというのはまさにこんな感じだろうなあ、きっと。
あんまりにも残念なので、気分を上げる為に月食が悪天候で見れなかったジョミの行動なんかを予想。
①腹いせに何かする(例:みんなを巻き込み火遊び。ロケット花火がハーレイ宅襲撃とか)
②一人、自室の月のパネルを見て思いを馳せる(根暗)
③遠い前世でにソルジャー何て呼ばれたのは伊達じゃない、って所を見せ付けてくれる。天候すらも鬼軍曹ジョミーには関係ない。
なんて事を考えたりして。
でも、本当に残念だなあ・・・。見たかった。昔、小学生の頃ですかね?夜から月食が始まる日があって、その時は天気もよく、しっかり月の影やうつりゆく輪郭、飲み込まれていく過程を見れたんですけど。えらく印象に残ってまして。いつか必ず、もう一度見たいなあとその日は子供ながら、夜中、朝方までずっと見ていて眠気半分に思ったものです。あの時見た、赤銅色の月が忘れられない。紅い月。次回はぜひとも見たいところです。
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「紅い月②」



「・・・拗ねるなんて、可愛いなあ。」
 目覚めたばかりの危うい頭は、そんな一文を僕に言わせて、寂しくなった両手は行く末を持たずにだらりと落ちる。
可愛い小さな魔法使い。さようなら。
「待ちくたびれたよ。」
 すぐ側の窓から青い空を見上げて、僕は言う。
「やっと、今夜だ。ずっと、待っていた。」
 月が地球に喰われるその時。
 僕はきっと、何かを得る。
 幼い頃からずっと、夢見ていた。
 部屋に飾ってあるのは、紅い月。
 カメラマンだった僕の祖父が残した物。
 祖父は僕が生まれる前に戦争で死んでしまった。彼が唯一、この世界に遺した物。彼は僕によく似ていたという。姿も、声も、全て。名前まで同じなのだから、笑ってしまう。
きっと、僕は彼の生まれ変わりだ。彼は僕の為に遺したに違いない。それが、一枚の月のパネル。大きな、紅い月。皆既月食を撮影した物よ、とマムが教えてくれた。
 トォニィよりも幼い頃から、僕はあの写真と共に育ち、あの写真を深く愛した。なぜならそれは、僕のもの。僕だけの、紅い月。
 居間にあったものを、部屋に飾ってと強請り、手元に返ったそれを僕はずっと見続けてきた。いつか、この目で紅い月を見ようと、僕は決意していた。
 その時が、ようやく僕の元にやってくる。
 僕は満たされるに違いない。
 焦がれ続けてきた紅い月。本物が、今夜、僕の目を焼付け放さないだろう。僕は絶対に、逃しはしない。その姿の全てを、僕の中に植えつける。
「ああ、そうか。」
 きっと、水面にうつったあの人は、僕が思いつめた末に生み出した、月の化身なのだ。
 思念が紡ぎ出した、夢の具現。
 きっとそうだ。
 あの人は僕の夢。
 僕の理想。
「あなたは僕の唯一つの存在。」
 誰も見てはならないそれは、紅い月。僕ですら見てはならない。輝きを収めた今夜だけ、僕は見ることを許される。常の光はあまりに強すぎて、僕はどうしようもなくなってしまうのだから。
 地球は月を放しはしない。その大地に立ち、見上げる僕はこの地の青さを、身に秘めたもの。両瞼をそっと手の平で覆い隠す。浮かび上がるのは、両手を広げて、影に隠れ銀の月。深紅に染まったその体を、誰の目を憚る事もなく、強く強く抱きしめる僕と、紅い瞳で微笑むあなた。あなたの体はきっと冷たいだろうから。
僕はあなたに口付けを落とし、赤黒い影を外した白磁の肌は、僕の熱を受け止める。ようやく辿りついたその瞬間に、僕とあなたは一つになって、この地球の上でとけてしまえば良い。
たとえ全てが終わっても、紅い月はもう二度と、天へはその姿を現さない。人々の目に映るのは、鈍い色をした月の影。
そうして僕らは海へ還ろう。全ての根源たる海へ、母の腕へこの身を投げ出すのだ。
「優しく抱きとめてくれるから。」
 だから早く。早く、僕の前に姿を見せて。
「僕はもうとっくの昔に、君に狂ってしまった。」
 
 
ジョミブル現代パラレル




「紅い月」


 
 夢を見た。僕はじっと水面を見つめている。
 それが川なのか、海なのか、それとも単なる池か、もしくは水溜り程度のものなのか、とんと検討がつかない。ただ、水面と向き合っている。それだけだ。
 それでも僕は水面を見ずにはいられない。
 じとりと僕を見返すのは紅い瞳。
 違う。これは、僕ではない。
 思わず瞼に手をやれば、そこには長い前髪の向こうからうとりと微笑む紅い瞳。違う。これは、僕ではない。僕の瞳は翡翠色。この星の緑を模した、青さを持つ。目の色が映えて美しいと褒めてもらった。それは金の稲穂を冠した髪の色。ひよこと笑われた事もあるけれど、緑の目も金の髪も、僕を構成するにおいて重要な欠片のひとつ。決して苛烈さを押し留めた、儚い紅色ではない。研ぎ澄まされた切っ先を、隠すように長い銀の髪でもない。
 これは僕とは違う生き物。
 何より僕はこんなにも奇麗な顔をしていない。
 君は誰。あなたは誰。
 問いかけに答えるべき唇は、緩く弧を描くだけで発する声は聞えない。
 代わりとばかりに、水面がゆらゆら、波紋を起こす。
 ああ、やめて。
 消えてしまう。薄れてしまう。
「駄目だ。」
 悲鳴にも似た慟哭を発して僕は、目を覚ます。
「消えてしまった。」
 最後の一瞬まで僕を見据えていた紅い瞳。美しい、そして怖ろしい。
 あの瞳は駄目だ。
 消えてはならない。見てもならない。
 戸惑いすら押し殺し、囚われる心はただ、夢の中の存在に焦がれてしまう。
 僕は見てはならない。
 思い出してもならない。
 夢を、見ない。
 見てはいけない。
「君は誰。」
 知ってるくせにと、からかう声はまだ子供。
 いや、僕は知らない。あなたを知らない。そして君も知らない。
「君たちは何。」
 酷いよ、忘れるなんて。どうして?どうして忘れるの。僕らを忘れて生きていけるの。ねえ、ジョミー。
「教えてくれ。君は誰だ。さっきのあの人は誰だ。」
 教えない。教えないよジョミー。だってそんなの、ずるいもの。
「何がずるいんだ。」
 得をするのはあの人だけ。ああ、ずるい。ああ、忌々しい。教えても、教えなくても嬉しがるのはあの人だけ。ジョミーが思うのはいつだって、あの人だけ。ああ、忌々しい。
「落ち着くんだ。君は誰だい。僕は君の名前を聞いている。教えておくれ。」
 嘘、嘘。ジョミーは嘘をついている。ジョミーが知りたいのは僕なんかじゃない。あの人さ。あの人が知りたいから僕を知りたがる。嘘つき。嘘つき。なんて酷い。でも僕はそんなあなたも大好きだよ。ジョミー。
「もう、煩い。教える気がないのなら話しかけるな。僕は寝る。そしてあの人に会う。」
 ジョミー。ジョミー。ごめんなさい。もう言わない。だから僕を見て。
「嫌だ。」
 ジョミー。
「君の事は嫌いじゃないと思うけど、僕は君よりもあの人の事がもっと嫌いじゃない。」
 いつだって、ジョミー、あなたはそれだ。もういいよ。僕も諦めた。
「そう、ありがとう。教えてくれるね?」
「かまわないよ。」
 耳の奥で聞えていた声が、右耳のすぐ後ろで鼓膜をゆすぶる。
 刺激の大きさに驚いて、思わず声を失った。
 ベッドから身を起こした僕の、足にまたがるようにして現れたのは小さな子供。夕日色の癖のある髪が、くるくるとからかうように大きく揺れる。
 まだ幼児といっても支障のない少年は、きらきらと瞳を輝かせて僕を凝視する。
「おはよう、グラン・パ」
「おはよう。」
 つられて返した言葉の持つあまりの自然さに、僕は自分の口から転げ落ちていった台詞に、首を傾げる事も出来ない。
「僕はトォニィ。グラン・パの願いを叶える為に生まれた魔法使い。」
 いたずらっぽく笑うトォニィの、額をこつんと弾いてやれば、嬉しそうに彼は笑う。その振動が、シーツを通して僕に伝わる暖かさに、なぜか心が安堵した。
「小さな魔法使い君、教えておくれ。僕の名前は?」
「ジョミー・マーキス・シン。」
「正解。どうして知ってるの」
「魔法使いの秘密だよ。」
 人差し指をそっと口元にあてて呟くトォニィが、どうしようもなく愛らしく思えて僕は彼をぎゅ、と抱き締めた。
「教えておくれ、魔法使い。君はどうしてここにいるの?」
「ジョミーに会いたかったからだよ」
 腕の中から僕を見上げるトォニィは、晴れやかな笑顔を見せて、そう言った。僕は腕の力を抜き、彼の頭を撫ぜてやる。
「僕は君とはどこかで会った事があるのかな」
「あるよ。」
「そうだと思った。見覚えがある。」
「どこで?」
「遠い、空の下。太陽が沈む時。今だって、僕は毎日、君との出会いと別れを繰り返してる。君は僕が知る最上の夕焼け。でも、僕は夕日よりももっと好きな物がある。」
「ジョミーは意地悪だってよく言われない?」
「言われないよ。言う人が居ないから。」
 にっこり笑い、不貞腐れてしまった幼い少年を、僕は可愛い可愛いと撫ぜ続ける。
 どうしてか、僕はこの温かく幸せな重みを知っている。彼を包む気配も、色も、知っている。どこでだろう。懐かしい気がして堪らない。しかし、僕の心は水面の向こうにある人に、焦がれてやまない。切なさに、胸が苦しくなる。
「ジョミー、苦しいの?」
「トォニィ。悲しいんだよ。」
「どうして?」
「紅い月が、ないから。」
 その一言に、彼がかぶりをふったその刹那、腕の中から小さな体は掻き消えた。


②へ

ジョミ→ブルみたいな。きっとジョミーはブルーが寝てる間にあれやこれやとしていたに違いない妄想。






 彼を飾り付けるという、あまりの難題に途方にくれる。耳元に小ぶりの薔薇の花を添えては見るが、しっくりこない。石はどうだと散りばめられた緑柱石の首飾りと、揃いの耳飾りをかざしてみては、駄目だと床に追い払った。シーツの上に横たえられた、彼は外の世界など、どうでも良いのか。身じろぎ一つせず、人形のようにそこに在るだけだ。頬に手をやり、するりとそのまま耳の形をなぞり、髪を梳いてはその心地良さに、うとりと笑む。そっと彼の名を呼ぶだけで、全てが満たされる。気を取り直し、金糸を始め、色とりどりの刺繍が見事な織物をあてては、似合わないと独り言をはき捨てた。

こんなにも、彼が完璧な存在であったという事実に、今更ながら驚いた。しかし、同時に完璧である存在は、それ以上の装飾品は不要とする、矛盾ともいえる欠点を浮き彫りにした。

目前の彼はまさに造形美術の最高傑作だ。瞼の下に隠された瞳が実に惜しい。昏々と眠り続ける彼の、眼窩にはめ込まれた宝玉を思い出し、ほうと溜息が洩れた。

自然の中から同じように生まれたはずなのに、不自然な程の美はもはや狂気の具現ともいえた。彼に魅入られ、引きずり込まれた人間の数は一体、どれぐらいになるだろうか。その度に、多くの醜い人の抜け殻を片付けてきた。この腐った肉が彼に魅入られた等、おこがましいと感じる以前に、不幸と思った。尤も、彼がそんな者達を見て、哀愁に濡れる様は堪らなく美しかったので、彼らは僕に幸福をくれる良い人達であるとも思った。

完全なる彼を、彩る事が出来るのは何もない空間だけだ。

僕は、今日も彼の体を真白いシーツでぐるりと包む。

課せられた使命が、完遂される日はまだ遠い。


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