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地球へ・・・二次創作パラレル小説部屋。 青爺と鬼軍曹の二人がうふふあははな幸せを感じて欲しいだけです。



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 何度も立ったり座ったり、誰かも分からぬお偉いさんに頭を下げ、嬉しくも無いしかもやたらと長い祝辞を頂戴してはまた頭を下げる。私立校の中でも、イロモノ校として特に有名なシャングリラ学園も、そのお決まりの流れは変わらないようだ、とブルーは欠伸をかみ殺して時が過ぎるのを待つ。
ただ、ひたすらに無為な時間を過ごさなくても良かったのは、こちらを見てはにっこり穏やかに微笑む、良き友・リオのおかげだろう。この短時間の中で、彼とはもう長年の付き合いではないかと思える程、親睦を深める事が出来た。何せ、不思議な事に彼とは目を見ただけで意思疎通が出来てしまうのだ。始めは彼の指が手の平に文字を書く事で言葉を交わしていたのだが、理事長の話辺りでそれももう、目を見ただけで何となく、彼が何を言いたいのかが分かるようになって、あれよという間に無言に近い雄弁な会話が成り立っていた。勿論、自分は小声で言語を発するが、それが不要となるのも遠い未来ではあるまい。
 これ程までに、他人と心を通わせる事が出来るのかと驚くと同時に、なぜかとても懐かしい思いで胸が締め付けられる。何だろう、と胸に手をあててみても、とく、と己の鼓動が響いてくるだけで、答えは何も出はしない。けれど、その懐かしさは酷く温かく、そして心地良い物で、もしかしたらこの調子で自分は誰とでも心を通わせ、友になれてしまうのではないかという錯覚をおこしてしまいそうになる。
 ジョミーの心も、今、会えばよく分かるかもしれない。
 心によぎった考えは、ふ、と目元を和らげたリオに気付かれてしまったらしい。そうだ、リオとて、自分と同じ感触を得て、驚いているに違いない。聞いてみようか、なぜ、僕らはこうまでお互いの心を思いやって通じ合えるのだろうか、と。
「答えは聞いてないね。」
 微笑む友の顔に、同じように笑みを返す。
 そうだ、僕らは友だ。それで良い。
「ねえ、リオ。僕の家には居候がいてね。ジョミーというんだ。僕が小さい頃から一緒に住んでいてね。僕の兄も弟も、もちろん僕自身も、彼の事は家族同然に思っている、大切な人なんだ。それはジョミーも同じだといつも言ってくれる。そう、僕らは家族なんだ。・・・・でも、僕はどうしてだろうか。彼への親愛の情の片隅に、どうにも、彼に対して苦手というか。複雑な思いを抱いてる。そう、きっと僕はジョミーが良く分からないんだ。それが恐いんだろう。」
 口からは吐息ばかりが洩れ出で、言葉らしい言葉はおそらく、誰にも聞き取れなかっただろう。しかし、そんな心配を僕らの間でする必要はない。
「ブルー、ジョミーは今日、来ていらっしゃるんですか?」
 リオの朗らかな思いを、耳といわず全てで感受する。リオの声は胸によく馴染む。
「ああ、来ているよ。一目で分かるだろう。」
「見なくとも、どこに座っているかも分かりそうです。」
 おかしそうにそう言うリオは、目線であそこでしょう?と問うてくる。ああ、そうだよ。と、同じように目をそちらへ向け、僕らは秘密を共有しあった者同士、堪らない、と笑った。
 ジョミーは保護者席の最前列に優雅に足を組んで座っている。その気配は圧倒的で、他者の足元の影ですら、彼の何もかもを包み込まんとする思いの下にひれ伏しているようだ。
彼の心はこれ以上なく喜びに満ち溢れているけれど、少々、機嫌を崩してきているようだった。この講堂を覆う彼の思いは、端々につまらない大人たちの話を草々にやめろと強く念じる気配が色濃く沈んでいる。それが波となり、かれこれ十分以上も長々と話を垂れ流しているこの学園の理事の一人を今まさに、襲わんとしているのが見えた。
「あの来賓の方、気の毒ですね。」
 揶揄するかのようにそう呟き、リオは瞬き一つ。ぱち、と瞼を閉じる音が聞えた。
「希望に満ち満ちた前途ある若者達の心をここまで萎えさせているのだ。良い気味さ。」
「ご愁傷様です。」
 ぱち、ぱち。二度、続けて瞬いて、この後の予定を立てることにした。確か今日は、入学式の後はもう、なにもなかったはずだ。教室に入り明日から始まる高校生活の心得を担任から聞かされるだけのはず。すぐに帰宅できるだろう。
家へ送られてきたこの一週間の予定表には、明日は身体検査の文字が記されていた。
「嫌だなあ。」
 検査はどうも苦手だった。真っ白い、この軟弱な体を人前に晒すという事も、いくつもの検査を一列に並び、受けるという事も。あの、何とも言えない皆のそわそわした感も、全てが自分にはどうにも苦々しく思えてしょうがない。何より、面倒だ。貴重な一日を、検査だけに費やすなど、時間の浪費ではないだろうか。健康診断など、いざと言う時はあてにならない。
「・・・それはちょっと違うんじゃないかと、ブルー。」
「そうかい?でも、自分の体は自分が一番良く分かっているはずだよ。わざわざ他人に見せる事も無い。」
「余程、嫌いなんですねえ。」
「ああ。そうだよ。」
「でも、学校行事ですからねえ。」
「・・・年中行事を取り決めているのは先生方、か・・・・。」
 参列する教師陣を眺め、ふむ、と思案にふけはじめる。直に、入学式は終わりを告げるだろうけれど、揺らぐ思考は弾けとんだ後も、しばらく僕を明るく悩ませてくれそうだ。
突然の急病人発生の為、閉式となるまで後数秒。
僕がぽん、と手を打つのも、もうまもなく。






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