地球へ・・・二次創作パラレル小説部屋。
青爺と鬼軍曹の二人がうふふあははな幸せを感じて欲しいだけです。
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テラ最終話。なんだかまだ、ふわふわした感じ。始まるまでどきどきして、見てる時はどくどくなって、終わったらざわざわと。とりあえず、なんかもう。ありがとうテラスタッフ!!!あそこでああくるとは思わなかった。つかグレイブ!!回想ブルーもたくさん。作画も安定、美しい。結果、はじき出された妄想話。アニメの終わり方も素晴らしかったけど!やっぱり、みんなでわいわいやってる、夢の共演、テラが!放映後のテンションが生み出したパラレルです。アニメの余韻に浸りたい方は、見ない方が・・・。
テラ最終話後の甚だしい妄想
テラから離れ、じき、十日あまりがたつ。グラン・パを筆頭に、長老たちや多くの仲間たちを失った僕らは直後、深い悲しみにとらわれてはいたが、やがてそれらは戸惑いや淋しさを残す程度には回復してきた。何よりも、僕らはテラの上、それまでにもテラへの道程の中で散っていった仲間の意志を引き継ぎ、明日を生きなければならない。いつまでも過去にすがっていられない。
僕らは必死に生きた。かつてのミュウや人間といった隔たりを乗り越えようとしている僕らは、生き残った仲間とシャングリラを中心に宇宙をさまよい、人同士、心をかわそうと皆、懸命だ。そんな中、あの時、シャングリラに転移されてきたテラの子供たちは、慣れない環境や突然、知りえた現実を前にして、もしかしたら一番つらく、そして力強く生きようとしているのかもしれない。
それは彼らとともに、生きよと長老たちに送り出されてきたフィシスも同じだった。彼女は率先して、親も友人もいない彼らを愛し、慈しんでいる。子供たちも一緒にあのテラからやってきた、という連帯感からか、フィシスにひどく懐いている。その甲斐あってか、彼らは元気に今日も、シャングリラ船内を駆け回っていた。時々、悪戯が見つかったのだろう、おやえ女史の怒声が、シャングリラを巡る。その度に、僕らは幸せな溜息と笑い声を発した。
一見、すくすくと毎日を過ごしている彼らに見えたが、彼らにも確かな弊害が生じている事を僕はフィシスから教えられる。初めてのテレポートによるショックからか、それとも別の要因があるのか。子供たちの中で三人程、記憶障害を引き起こしてしまった者がいた。フィシスは自分のことが分からない、名前すら記憶にない彼ら三人に新たな名前をつけ、他の子たちよりも情緒が不安定な彼らを、特に注意深く見守っていた。
子供たちは眠る時、皆がフィシスにくっつきたがった。彼女の側にいると安心するのか、彼らは悪夢を知らずに時を過ごせる。フィシスは一人一人、子供たちをしっかりと抱き締め、おやすみ、と言ってやるのが日課となっていた。時折、それに僕も参加する。が、懐いてくれるのは未だ、三人だけだ。その内、他の子たちも近寄ってくれるだろう。何せ僕は彼らとそう、歳は変わらないのだから。
それなりに時は流れようとするものである。
今日も僕はシャングリラのブリッジで、数少ない仲間たちと、新たな仲間たちの中から集った代表者とともに、これからの道を模索していた。
「ソルジャー、ソルジャー。トォニィ!!」
緊張感にうんざりとし始めた僕の耳に、痛いほどの思いが篭った声がする。息を荒げ、珍しくもフィシスがブリッジへと走り込んできた。彼女のここまで焦りと不安に満ちた声を聞くと僕はまだ、どきりと、恐怖が心を支配する。しかしそれよりも、呼ばれ慣れないソルジャーという呼称に、胸がきゅ、となる。それはきっと、懐かしさや淋しさ、そして誇らしさと、晴れがましい照れくささから。ブルーや、ジョミーと同じ、名前だから。
「どうかした、フィシス。」
「ああ、トォニィ。どうしましょう。」
「落ち着いて。何があったの」
「あの子たちが、彼らがいないんです。また、かくれんぼでもして遊んでいるものと思っていたんです。でも、皆で眠る準備をしはじめても、あの子たちだけが帰ってこないのです。心配になって探したのですが、どこにもいないの。ああ、どうしましょう。トォニィ。ジョミーと、ブルー。キースを探してください」
びくり、と、刹那。僕の指先は震えた。慣れないその名は、フィシスが名を無くした三人の子供たちに与えた、新たな名前。
それなりに時は流れようとするものである。
今日も僕はシャングリラのブリッジで、数少ない仲間たちと、新たな仲間たちの中から集った代表者とともに、これからの道を模索していた。
「ソルジャー、ソルジャー。トォニィ!!」
緊張感にうんざりとし始めた僕の耳に、痛いほどの思いが篭った声がする。息を荒げ、珍しくもフィシスがブリッジへと走り込んできた。彼女のここまで焦りと不安に満ちた声を聞くと僕はまだ、どきりと、恐怖が心を支配する。しかしそれよりも、呼ばれ慣れないソルジャーという呼称に、胸がきゅ、となる。それはきっと、懐かしさや淋しさ、そして誇らしさと、晴れがましい照れくささから。ブルーや、ジョミーと同じ、名前だから。
「どうかした、フィシス。」
「ああ、トォニィ。どうしましょう。」
「落ち着いて。何があったの」
「あの子たちが、彼らがいないんです。また、かくれんぼでもして遊んでいるものと思っていたんです。でも、皆で眠る準備をしはじめても、あの子たちだけが帰ってこないのです。心配になって探したのですが、どこにもいないの。ああ、どうしましょう。トォニィ。ジョミーと、ブルー。キースを探してください」
びくり、と、刹那。僕の指先は震えた。慣れないその名は、フィシスが名を無くした三人の子供たちに与えた、新たな名前。
彼らを彼らと成した、大いなる名前。どこか「彼ら」に似通った雰囲気を持っていた三人の子供たちは、新たな名前に臆することなく、のびのびと生きている。しかし、最初にその名を聞き、僕はフィシスはなんて残酷なのだと思った。彼女を攻め立てる気にはならない。だが、あまりにも酷な事ではないのか。その名をつけるということは、名に刻まれた重みすら、背負うと言うことには、なりはしないのだろうかと。
子供たちの名前を彼女が告げた時に、フィシスにそう進言すると、彼女はにっこり笑い、彼らの魂が、私に教えてくれた名前なのです。と言った。そこには戸惑いの影すら、見受けられない。また、僕自身がもっとも覚えのあるその感覚を持ち出されたら何も言えない。なぜなら僕はフィシスに僕の名を告げた過去を持つからだ。
偶然の贈り物なんだね、と問えば、素敵な贈り物です。とほほえむ彼女。彼女がブルーやジョミー、キースと呼ぶたびに、はたして彼女の見えない眼は一体、誰を映しているのだろうか。僕はそれを尋ねたい気持ちになる程、まだ、大人にはなれない。
誰にも震える体を悟られぬよう、マントの裾を大げさにさばき、僕は言う。
「シャングリラ、すべてを探したの」
「ええ、子供たちや、ツェーレンたちにもお願いして一緒に探したのですが、」
偶然の贈り物なんだね、と問えば、素敵な贈り物です。とほほえむ彼女。彼女がブルーやジョミー、キースと呼ぶたびに、はたして彼女の見えない眼は一体、誰を映しているのだろうか。僕はそれを尋ねたい気持ちになる程、まだ、大人にはなれない。
誰にも震える体を悟られぬよう、マントの裾を大げさにさばき、僕は言う。
「シャングリラ、すべてを探したの」
「ええ、子供たちや、ツェーレンたちにもお願いして一緒に探したのですが、」
「格納庫も?展望台や機関部も?」
「はい、すべて」
「ブリッジ内は?」
「まだ、まだでした」
彼女の気の抜けたような声音に、なぜか僕はほっとした。「青の間は?」と尋ねなくても良い事実に、僕は安堵したのだ。テラを去った時から、僕らの間には「青の間」の名を出さないという、暗黙の確約が自然と取り交わされていた。やはり、僕らはつらかったのだ。彼らを連想するもの、させるものすべてが、つらく悲しく、さみしい。そして、愛しい。
「いましたよ、ソルジャー!」
シドの声に、フィシスが喜びに包まれる。
「ああ、良かった。子供たち!」
駆け寄るフィシスは女神でも何でもない。我が子の無事な姿に安堵し、ただ抱き締める母親だ。彼女の背中を見て不意に、ママを思い出す。幼い自分のこと、そしてグラン・パの赤いマント。抱き上げられた高さは、パパより高くて、色んなものが見えた。
「見つかっちゃったや。キース、おまえこんなところに来たがるからだめなんだぞ」
「ブルーだって賛成した」
「はい、すべて」
「ブリッジ内は?」
「まだ、まだでした」
彼女の気の抜けたような声音に、なぜか僕はほっとした。「青の間は?」と尋ねなくても良い事実に、僕は安堵したのだ。テラを去った時から、僕らの間には「青の間」の名を出さないという、暗黙の確約が自然と取り交わされていた。やはり、僕らはつらかったのだ。彼らを連想するもの、させるものすべてが、つらく悲しく、さみしい。そして、愛しい。
「いましたよ、ソルジャー!」
シドの声に、フィシスが喜びに包まれる。
「ああ、良かった。子供たち!」
駆け寄るフィシスは女神でも何でもない。我が子の無事な姿に安堵し、ただ抱き締める母親だ。彼女の背中を見て不意に、ママを思い出す。幼い自分のこと、そしてグラン・パの赤いマント。抱き上げられた高さは、パパより高くて、色んなものが見えた。
「見つかっちゃったや。キース、おまえこんなところに来たがるからだめなんだぞ」
「ブルーだって賛成した」
「僕はブリッジを上から眺めたかったんだよ?」
「だってさ。キース、おまえが先にフィシスにあやまれよ。」
「ジョミー、君が一番先に忍びこんだよな、ブルー?」
「どうだったかな、ジョミー?」
「だってさ。キース、おまえが先にフィシスにあやまれよ。」
「ジョミー、君が一番先に忍びこんだよな、ブルー?」
「どうだったかな、ジョミー?」
呑気に掛け合い漫才を始めてしまった子供たちは、世界は自分たちを中心に回っていると無意識に分かっている、まだ年端も行かぬ幼さを振りまいている。
「こら、お前ら。勝手にブリッジに入るなと言っておいたはずだ。それに今は、何をすべきだ?」
「ソルジャー。」
呼び掛けに、一斉に振り向く小さな頭が三つ。太陽の化身に、夜の静けさ、そして刹那に瞬く星の色。順に、ジョミー、キース、ブルー。光の加減で薄い金にも星色にも見えるブルーの髪が、まいったな、と言うようにしゅん、と垂れている。その様がすこしおかしくて、僕は笑いをこらえるのがやっとだ。
「ジョミー、キース、ブルー。」
フィシスの声に、ジョミーの肩がびくりと強ばる。
「ああ、もう。泣かないでよフィシス!」
あわてるジョミーを尻目に、キースが歩み寄り、幼いその腕で床に崩れ落ちてしまったフィシスの頭を抱きかかえた。ブルーは黙って彼女の手を取り、ジョミーは一人、あわあわとしている。ようするに、三人とも、フィシスが彼らを思うように思っているのだ。まったく、彼女を大切に思うなら、フィシスを泣かせるようなことをしなければ良いのに。
「もう、黙っていなくならないで」
彼女の言葉に、三人は素直に謝った。
ブリッジにいる全員が、ほっと息を付く。
正直、彼らの思わぬ参入は助かった。ここのところ、あまりにも壮大な宇宙と未来を前に、僕は疲れを感じはじめていたのだ。若々しい風そのものの彼らを前に、僕らは怖じ気づきそうになる気持ちに背を向けられる。
「さ、子供はもう寝る時間だ。」
「はい、おやすみなさい、ソルジャー。」
「おやすみ、トォニィ。」
「こら、お前ら。勝手にブリッジに入るなと言っておいたはずだ。それに今は、何をすべきだ?」
「ソルジャー。」
呼び掛けに、一斉に振り向く小さな頭が三つ。太陽の化身に、夜の静けさ、そして刹那に瞬く星の色。順に、ジョミー、キース、ブルー。光の加減で薄い金にも星色にも見えるブルーの髪が、まいったな、と言うようにしゅん、と垂れている。その様がすこしおかしくて、僕は笑いをこらえるのがやっとだ。
「ジョミー、キース、ブルー。」
フィシスの声に、ジョミーの肩がびくりと強ばる。
「ああ、もう。泣かないでよフィシス!」
あわてるジョミーを尻目に、キースが歩み寄り、幼いその腕で床に崩れ落ちてしまったフィシスの頭を抱きかかえた。ブルーは黙って彼女の手を取り、ジョミーは一人、あわあわとしている。ようするに、三人とも、フィシスが彼らを思うように思っているのだ。まったく、彼女を大切に思うなら、フィシスを泣かせるようなことをしなければ良いのに。
「もう、黙っていなくならないで」
彼女の言葉に、三人は素直に謝った。
ブリッジにいる全員が、ほっと息を付く。
正直、彼らの思わぬ参入は助かった。ここのところ、あまりにも壮大な宇宙と未来を前に、僕は疲れを感じはじめていたのだ。若々しい風そのものの彼らを前に、僕らは怖じ気づきそうになる気持ちに背を向けられる。
「さ、子供はもう寝る時間だ。」
「はい、おやすみなさい、ソルジャー。」
「おやすみ、トォニィ。」
悪戯っぽそうに青い瞳を細めるジョミーと、手を振るブルーに、十歳くらいのナリをして、目礼をするキース。彼らを見送り、自分だってまだ子供のくせに、と僕は知らず、自嘲した。フィシスが心配そうに僕をみるのが分かる。彼女、本当は見えてるんじゃなかろうか。
膠着から脱した僕らは遅くまで話し合った。これからのこと、そしてお互いのこと。新鮮な気持ちでなされた会話は、実のあるものだった。
僕は寝静まったシャングリラを、夜の散歩だと、練り歩く。誰の姿も見えない夜のシャングリラが、意外にも僕は好きだ。きっとそれは、昔、グラン・パが僕を背負って、夜の散歩だと囁き同じようにシャングリラを練り歩いたせいだろう。
ナスカに降りてからしばらく、僕が生まれたあの頃、グラン・パはナスカに定住すべきだと主張する若い世代と、テラへ向かうべきだと唱える長老たちとの間に挟まれ、そして何よりもブルーの心を思い、悩んでばかりいた。そんな時、彼はよくこうして、僕を背負ってシャングリラや時にはナスカの地を歩いた。僕が知らないだけで、グラン・パは毎晩、こうして黙々と、散歩と称し眠れぬ夜を明かすように歩いていたのだと思う。もしくは青の間へと、身を寄せていたのだろう。今の僕には近寄ることすらできない、青の間。あそこはシャングリラの聖域だ。あの場所には、ブルーやジョミーの残り香が今でも色濃く漂っている。故に僕は近寄れない。さみしさに取り込まれそうで、怖かった。
そう、僕はやはり、さみしい。最後に頭を撫ぜ、抱き締めてくれたグランパの腕のぬくもりが忘れられない。肩に添えられたキースの手の平の熱さが忘れられない。幼い体を受けとめてくれたブルーの胸の暖かさが、今でも全身覆い、守っている。過去にとらわれてはいけない。
そう、僕はやはり、さみしい。最後に頭を撫ぜ、抱き締めてくれたグランパの腕のぬくもりが忘れられない。肩に添えられたキースの手の平の熱さが忘れられない。幼い体を受けとめてくれたブルーの胸の暖かさが、今でも全身覆い、守っている。過去にとらわれてはいけない。
前へ、僕らはすすみたい。
けれど、ほんの少しだけ。前へ進むための力を養う為に、ほんの少しだけ。昔を懐かしむ余裕を持ったって、いいじゃないか。
僕はすっかり遠退いてしまっていた青の間へとつま先を向けた。
何もない。あるのは空のベッドだけ。それでも、受け継がれたこの補聴器を、元の主人の幻影へ一時、預けるくらい、いいじゃないか。
僕は青の間に、久しぶりに足を踏み入れた。
静寂に包まれた場所。青白い光を放つ、ソルジャーの寝床。ブルー亡き後、グラン・パの居場所ともなっていた。
「グランパの時は差し詰め、赤の間、かな?」
なら僕は、マントの色を取って緑の間、かな?
使うはずもない名称を考えて、おかしくて、僕は笑う。なんだか笑ってばかりだと、自分のたくましい想像力と思考パターンにまた笑った。
僕はすっかり遠退いてしまっていた青の間へとつま先を向けた。
何もない。あるのは空のベッドだけ。それでも、受け継がれたこの補聴器を、元の主人の幻影へ一時、預けるくらい、いいじゃないか。
僕は青の間に、久しぶりに足を踏み入れた。
静寂に包まれた場所。青白い光を放つ、ソルジャーの寝床。ブルー亡き後、グラン・パの居場所ともなっていた。
「グランパの時は差し詰め、赤の間、かな?」
なら僕は、マントの色を取って緑の間、かな?
使うはずもない名称を考えて、おかしくて、僕は笑う。なんだか笑ってばかりだと、自分のたくましい想像力と思考パターンにまた笑った。
テラを出てから十四日、今夜も僕は夜の散歩を楽しむ。三日前からの終着駅は、青の間となっている。僕は皆が起きだすまでそこで何をするでもなくぼんやりとし、時には夢うつつとなる思考の向こう、幼い日々を懐かしむ。記憶のレコードが、擦り切れないように。回りすぎないように。慎重に、目を瞑りしばしの安楽を受けとめる。
今夜も先夜を見習い、空のベッドに腰掛けることなく、すぐそばに座り込み、目を瞑る。昼間に眺めた幼い自分の落書きには、笑顔のジョミーのそばに、ベッドで眠るブルーもそえてあった。我ながらたいしたものだと思った。
と、耳がどこからか水音を拾った。はた、と思案にくれていた意識をあたりに向ければ、誰かの視線を感じるような気がする。おかしい。ここには今は僕だけだ。しかし、確かに何かの気配がする。気のせいか、足音すら僕の耳は拾い取っていた。
そういえばフィシスが、このところ、オバケが出ると子供たちが恐がっていけない、とこぼしていたことを思い出した。辺りに渦巻く仲間の思念や気配を感じているだけだろうと、まさか、と笑い飛ばしていたが、まさか。
今夜も先夜を見習い、空のベッドに腰掛けることなく、すぐそばに座り込み、目を瞑る。昼間に眺めた幼い自分の落書きには、笑顔のジョミーのそばに、ベッドで眠るブルーもそえてあった。我ながらたいしたものだと思った。
と、耳がどこからか水音を拾った。はた、と思案にくれていた意識をあたりに向ければ、誰かの視線を感じるような気がする。おかしい。ここには今は僕だけだ。しかし、確かに何かの気配がする。気のせいか、足音すら僕の耳は拾い取っていた。
そういえばフィシスが、このところ、オバケが出ると子供たちが恐がっていけない、とこぼしていたことを思い出した。辺りに渦巻く仲間の思念や気配を感じているだけだろうと、まさか、と笑い飛ばしていたが、まさか。
マントの握り締め、膝に手をやり縮こまる体が情けない。
ここには自分以外、誰もいないはずだ。第一、皆、ここには近寄ろうともしない。それなのに。誰もいないはずなのに。思えば思うほど、誰かの気配は、ますます強くなっている。見つめられている気すらしてきた。
まさか。
ぴちゃ、水が跳ねる音がした。
まさか。
おそるおそる、顔を上げれば、やはりそこには誰もいない。ただ、静かな水面が広がるばかり。
まさか、なあ。
は、と息を付いた瞬間。
「またここに来たのかい、トォニィ?」
聞き覚えのある、幼いその声。
見上げた先、微笑む眼差しは見慣れた緑柱石。金の髪は薄青の世界に溶け込みながらも、しっかりとそこにある。記憶のものよりも幼い顔に、ああ、君かジョミー。またかくれんぼかい?尋ねる舌が固まる。
まさか。
ぴちゃ、水が跳ねる音がした。
まさか。
おそるおそる、顔を上げれば、やはりそこには誰もいない。ただ、静かな水面が広がるばかり。
まさか、なあ。
は、と息を付いた瞬間。
「またここに来たのかい、トォニィ?」
聞き覚えのある、幼いその声。
見上げた先、微笑む眼差しは見慣れた緑柱石。金の髪は薄青の世界に溶け込みながらも、しっかりとそこにある。記憶のものよりも幼い顔に、ああ、君かジョミー。またかくれんぼかい?尋ねる舌が固まる。
待て、ジョミーの目の色は、何色をしていた?それに、この顔。似すぎてや、いやしないか?混乱したまま記憶を探ろうとする僕の目に、何かが浮かんでいるような影がうつる。視線をあげて、同時になぜ、と声をもらす。君は、君たちはテラの子供たちではなかったのか。なぜ、ミュウでもないのに宙に浮かべる。
穏やかに笑む紅い瞳。銀色の髪は、ふわふわと宙に浮く体に合わせ、青の間に当たり前のようになじんでいる。光の加減などではない。はっきりと分かる、白銀の髪。きっと彼を置いてこの青の間に相応しい人物はいないだろう。最後に背後から、のっそり顔を出したのは氷青色の瞳と美しい黒髪の少年。心なしか目付きが昼間に見た時よりも、鋭く無感動だ。
「幽霊?」
恐々と紡いだ言葉に、彼ら三人、幼い姿ではあるが紛れもない「彼ら」三人ともが目を合わせ、同時に吹き出した。
「発想はまだ、幼いものだな」
「トォニィは想像力が豊かなんだよ。」
「恐がらせてすまない、トォニィ。」
キース、ジョミー、ブルー。
否、キース・アニアン、グラン・パ、ソルジャー・ブルー!!
穏やかに笑む紅い瞳。銀色の髪は、ふわふわと宙に浮く体に合わせ、青の間に当たり前のようになじんでいる。光の加減などではない。はっきりと分かる、白銀の髪。きっと彼を置いてこの青の間に相応しい人物はいないだろう。最後に背後から、のっそり顔を出したのは氷青色の瞳と美しい黒髪の少年。心なしか目付きが昼間に見た時よりも、鋭く無感動だ。
「幽霊?」
恐々と紡いだ言葉に、彼ら三人、幼い姿ではあるが紛れもない「彼ら」三人ともが目を合わせ、同時に吹き出した。
「発想はまだ、幼いものだな」
「トォニィは想像力が豊かなんだよ。」
「恐がらせてすまない、トォニィ。」
キース、ジョミー、ブルー。
否、キース・アニアン、グラン・パ、ソルジャー・ブルー!!
声が、擦れる、と思ったが、案外しっかりした音が鳴る。おどけた風を、装って。
「キース、ジョミー、ブルー。またかくれんぼかい?」
「キース、ジョミー、ブルー。またかくれんぼかい?」
萎縮していた体から、力が抜けていく。悪戯坊主の笑顔で、緑の瞳が細く笑った。
「そうだよ、トォニィ。ちょっと、隠れてる時間も場所も長くて難しかったかい?」
「はい、ジョミー、いいえ、グラン・パ。でも、みつけましたよ」
とん、と床にブルーの足が着く。
「そうだよ、トォニィ。ちょっと、隠れてる時間も場所も長くて難しかったかい?」
「はい、ジョミー、いいえ、グラン・パ。でも、みつけましたよ」
とん、と床にブルーの足が着く。
「みつかった。」
重なる声は、馬鹿みたいに晴れ渡っている。
重なる声は、馬鹿みたいに晴れ渡っている。
「どうして?」
「それだよ、」
指し示す指先は、白く、細い。
「補聴器?」
「そして、あの時、強く願ってくれた長老たちと、君自身に。僕らは最大の感謝と喜びを。」
「君がみつけてくれたら、僕らはまた、僕らとして新たに生きようと思った。」
「彼女はまだ気付いていないようだが。じきに、知るだろう。」
何食わぬ顔で淡々と語るキースは、ちょっとえらそうだ。
「みつからなかったら?」
「ただのジョミー、ブルー、キースとしてありえなかった子供時代をせいぜい満喫して生きていこうかな、とか」
あ、ジョミーは幸せだったね、昔も。
紅い瞳は、こんなにも力強く輝いていたのか。初めて知った。
「トォニィ?」
「僕は、昔から、かくれんぼが得意だったんですよ。グラン・パのマントの影に隠れたり、ブルーのベッドの後ろに隠れたアルテラをみつけたり。」
「知ってるよ、トォニィ。」
「僕は、昔から、かくれんぼが得意だったんですよ。グラン・パのマントの影に隠れたり、ブルーのベッドの後ろに隠れたアルテラをみつけたり。」
「知ってるよ、トォニィ。」
賑やかな君たちの声が、眠っている僕の耳にも聞えていたから。ああ、ジョミーの怒鳴る声もね。
不思議と、涙は流れない。だから、僕は目前の彼らをはっきりと見る事が出来た。小さい体、確かにそこにいる、子供たち。その姿はくっきりと、彼らであり、決して出遭えるはずはなかった幼い彼ら。
「みぃつけた。」
「みつかった。」
肩に手をそえるキースのぬくもり、小さな体で抱き締めるグラン・パの暖かさ、そんな僕らを細い腕を精一杯、伸ばして支えるブルーの熱。すべてが懐かしく、新しい。
「くわしい言い訳は、後からフィシスや皆と聞きますからね、」
「大人になったなあ、トォニィ。」
「子供はちょっとみない間に、すぐに大きくなるんですよ、」
「だ、そうだよ、キース。」
「知らなかったな。私の場合はほぼ自我なく寝ていた。」
「フィシスと並んでぷかぷか浮かぶ君は、わりと可愛かったな」
「ブルー、あなた、こいつに痛い目にあわされたの、覚えてないんですか」
「年寄りはすぐに忘れるからね、ジョミー。」
体の距離は密着していても、心は一部、溝もあるらしい。どうせ橋のかかってる溝だろうけれど。
「次はあなた方が鬼ですからね。僕をみつけてくださいよ」
「いつでも、みつけてあげるよ、僕らの大事なソルジャー。」
偶然の贈り物に。素敵な贈り物に。
「誕生日プレゼント、前借りです」
ありがとう。
「みぃつけた。」
「みつかった。」
肩に手をそえるキースのぬくもり、小さな体で抱き締めるグラン・パの暖かさ、そんな僕らを細い腕を精一杯、伸ばして支えるブルーの熱。すべてが懐かしく、新しい。
「くわしい言い訳は、後からフィシスや皆と聞きますからね、」
「大人になったなあ、トォニィ。」
「子供はちょっとみない間に、すぐに大きくなるんですよ、」
「だ、そうだよ、キース。」
「知らなかったな。私の場合はほぼ自我なく寝ていた。」
「フィシスと並んでぷかぷか浮かぶ君は、わりと可愛かったな」
「ブルー、あなた、こいつに痛い目にあわされたの、覚えてないんですか」
「年寄りはすぐに忘れるからね、ジョミー。」
体の距離は密着していても、心は一部、溝もあるらしい。どうせ橋のかかってる溝だろうけれど。
「次はあなた方が鬼ですからね。僕をみつけてくださいよ」
「いつでも、みつけてあげるよ、僕らの大事なソルジャー。」
偶然の贈り物に。素敵な贈り物に。
「誕生日プレゼント、前借りです」
ありがとう。
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