地球へ・・・二次創作パラレル小説部屋。
青爺と鬼軍曹の二人がうふふあははな幸せを感じて欲しいだけです。
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彼は兎が人へ変化した生き物なのだろうか、それも雪兎だ。そう入学式の時、生徒会長として壇上で挨拶をした彼を見て、僕は昔、幼い頃に作った雪兎を思い出した。
真っ赤な瞳に、真白い肌。光を帯び輝く髪は白銀。兎みたいに、ふわふわとした触り心地なのではないか。陽光は彼の髪をきらきらと装飾するが、美しい白銀の髪は何だか冷たそうだとも思った。
それはきっと彼が雪兎だからだ。ならば耳は?僕はあの時、きちんと耳も葉っぱで作った。目は言うまでもなく、南天の実だ。赤く、丸く可愛らしい。耳は、ぎざぎざの葉っぱにした。存在を誇張する、つやと光る緑の耳。では彼は。彼の耳を覆うのは補聴器。しかも旧型。古臭いそれは、きっと聞える音も悪いし何より言葉は悪いが、不恰好だった。だが、自然とそれが馴染んでしまうのだから美形は得だな、と思った。
雪兎は凛とした様子で全校生徒を前に、台本もなしにすらすらと自分の考えを述べる。耳に心地良い声は、どこか消え入りそうな彼を、その意志の強い瞳と共に強くこの世に押し留める。光に透けて形をゆがませる雪兎とは違う彼。しかし、ふと目線を落した瞬間、一気に儚さが漂う彼は、春になれば溶けて目の前から消えていなくなってしまう、そんな不安定な存在なのではなかろうかと思ってしまう。
溶けてしまった雪兎を前に、僕は泣いてしまった。後から何匹も作ったけれど、作るたびに訪れる別れは悲しく、あっという間だ。冷凍庫に入れても、最後には溶けていなくなってしまう。彼もそうなのではないかと、赤い瞳が睫の影に隠れてしまう事に、自分は、彼がいなくなってしまうと、その事にこれ以上ない恐怖を感じた。
けれどそれも、彼と面と向かって話をしてみて、がらがらと無残にも崩れ去ってしまう。それは気のせいと呼ばれる類の恐怖だ。彼はこれ以上なく頑丈で、とても儚げに散ってしまうような存在ではなかった。雪兎はしょせん、過去の思い出でしかない。僕は彼を雪兎であるなどと思った事がおかしくって、悔しくって、大きくな声を出しては、よく彼を怒鳴りつけてしまう。もっともそれは、彼の行動も原因の一つだ。はっきりいって彼は性質が悪い。
入学早々の僕を生徒会室へ拉致るわ、生徒会長、否、「そるじゃあ(ソルジャーであると、後からリオに訂正された)」を何も知らない新入生に突然、何の前触れもなく譲るやら、ギャンブルを始めとする勝負事への執着心にはもう勘弁して下さいと言いたい。遊ぶ事が大好きで、暇さえあれば生徒会室でお茶をすすり宝くじを買いに行き、校内を散歩したり校内で賭け事をやりだしたり校内で育てた野菜で漬物をつけたり校内で怪しげな集会を始めたり。だらだらとご尤もなお声でご尤もな説教を垂らしちょっと事情が悪くなるとすぐに死ぬ、胸が苦しいもう僕は駄目だ後は任せたジョミーと倒れる振りまでする。いいや、実際に倒れる芸当までしてくれる。見事だった。彼の倒れる様は実に素晴らしい。思わず抱きとめて涙を流してしまいそうになる。彼はとても元気だ。とても存在感のある、とても安定した存在だった。
それでも、時々、やはり彼は雪兎だと思ってしまう。
ぱたりと音を立てるんじゃないかと思われる長い睫が、瞼が落ちると一緒に伏せられるその刹那。彼は普段のはちゃめちゃ振りを奥へひた隠して、泣きだしてしまいそうな程、不安定で儚い存在となる。
一体、どちらなのだ。どっちが本当の彼なのだろうかと、僕は悩み始めてしまう。彼ではないけれど、どちらなのだ、フィシス!と言いたくなる。おそらく、彼女はカードを片手にお待ち下さいソルジャーと言ってくれるだろう。フィシス、遅いんだよそれでは。突っ込んだら最後、彼女の呪いを身に受けての高校生活はまっこと、怖しく苦しい。
そういえば、転校生のキースは彼女からの呪いをどうしたのだろう。フィシスの事だ。いや、仮にも彼女は先輩だからフィシス先輩、と呼ぶべきなのだろうか。そうなると、彼はどうなる。先輩、それとも先代か。似合わない。とてもじゃないが、二人とも、そんな風には思えないし呼びたくない。やはりここは名前で呼ぶべきなのだろう。
転校生であるキース・アニアンは転入してすぐに問題を起こしてくれた。彼は頭は良いはずなのに、なんであんなにアホなのだろうか。それをいうなら彼とてそうなのだろうけれども。③へ
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