地球へ・・・二次創作パラレル小説部屋。
青爺と鬼軍曹の二人がうふふあははな幸せを感じて欲しいだけです。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
騒がしいな、と思ったのは学園に着いてすぐの事だ。じっくり雰囲気を感じ取る前に、ざわめきを拾った出来の良い耳は、すぐさま、ジョミーに中庭へ行けと指令を出すよう脳へと進言する。一刹那、伝令を受け取ったジョミーは、勝手知ったる校内をそれでも早足で抜け、人波をさらりさらりとかわして時計塔を視界に入れる。
講堂のすぐ横、全校生徒に毎時間、時を知らせてくれる時計塔は最上階に大きな釣鐘を持つ。あれを鳴らせるのは何十年とこの学園で働いている、ゼルという用務員だけだ。年老いた体で、まだあの塔に上り、鐘を撞いているのか。老師(彼のあだ名だ)も諦めてさっさとカラクリにするなり電動にでもしたら良いものを。
ジョミーが中庭に到着する前から、鳴り響き始めた鐘の音は、頭の中を無理やり混ぜっ返す程、大きな音で辺りを震わせている。
尤も、そんな大音響の中で負けじと声を張り上げた女性も大概、すごいけれど。
誰の保護者だ、ご立派な。
冷めた感想を吐き捨て、ジョミーが中庭で目にしたものは、空から堕ちて来た天使、ではなく、見知ったその彼。
「入学早々、派手な真似を・・・。」
呆れ果てて、逆に笑ってしまう。しかもその天使は、大変美しく地面に着地するや否や、颯爽と講堂へ駆け出したのだ。本当に、羽根でも生えているのかしらん、と思わせる軽やかな足取りは、まったくもって素晴らしい。おそらく、彼の耳には周囲のざわめきなど入ってやいない事だろう。かろうじてその視界は、驚いている人々を映している程度、だろうか。
「僕は叱るべきなのか、良くやったと褒めるべきなのか。」
当然、危ないから二度とやらないよう、注意すべきだろう。
「言っても聞かないからなあ。あの子は。」
何度か、家で彼が天使になった場面を目撃した事がある。確か始めは、彼がまだ十歳になるかどうか、といった頃だったろうか。ちょっと目を放した隙に、三階の窓から庭へとするりと彼は飛んで行ってしまった。驚いて窓から下を覗き込めば、笑顔で手を振ってくる始末だ。心臓が止まるかと思ったものだ。そう言って叱れば、彼の方が真っ青な顔をして、すまない、死なないでジョミーと泣きそうになったものだけれど。泣きたいのはこっちだと先に泣いてしまったのは、誰にも見せたくない人生の汚点、封印したい過去だ。
「ま、怪我をしないようならそれで良いか。」
ジョミー自身も、子供の頃は何かと母親を心配させる馬鹿をした。ブルーの事は言えない。
「怪我しないから、厄介なんだけど・・・。」
一度でもかすり傷で良い。何か起こったならば、今度こそ自分はきっぱり、ブルーに危険な事はしないようきつく言い含める事が出来る。が、それはないだろうと天を仰ぎ見る。
「良い空だ。風も良い。」
これなら、飛びたくなるはずだ。
「甘いなあ、僕は。分かってる事だけど・・・・。」
喧騒は収まりつつあるのに、まだ騒いでいる女性を静めてやるのが、保護者代理としての勤めの一つだろう。
「奥さん、あなたは運が良い。彼は曲芸師の卵でね。知りませんか?ほら、公園に来てる、ミュウの一員ですよ。」
我ながら嘘臭い。けれど気が動転している女性は、それを信じてくれたようだ。途端、目を輝かせて、あのミュウの?!と尋ねてくる。ふむ。どうやらミュウはこの町では人気者らしい。
ミュウとは最近、地方興行を増やしてきた本国の手っ取り早く言えばサーカス団だ。人間業とは思えぬ華麗な演技は、一種の恐怖すら与える最高のエンターテイメントの一つとして、国民、特に団員達が皆、美形と言う点から女性に大人気だ。ブルーもあの顔だ。それっぽいと言えば、それっぽい。
「ミュウなんかに、売り飛ばしやしないけど。」
別の意味で盛り上がってきた中庭の連中の子供が、これからブルーの同級生となるのか。
ジョミーは複雑な思いを昇華出来ないまま、ブルーが消えていった講堂の正面玄関へと、踵を返した。
鐘の音は空の彼方へ響き渡り、入学式の始まりを告げる。
第1話「入学式」完
第2話「検査」へ
第1話「入学式」完
第2話「検査」へ
PR
この記事にコメントする
カレンダー
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
フリーエリア
最新コメント
最新記事
(05/29)
(05/29)
(01/13)
(01/13)
(01/13)
最新トラックバック
プロフィール
HN:
長四郎の
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
地球へ・・・。ジョミブル中心テキスト同人サイトです。公式さんとは一切関係ありません。
同人サイトさんに限り
リンクフリー。
「サカサマ テラ分館」
管理人:長四郎の
連絡先
sakasano-na@zeus.eonet.ne.jp
同人サイトさんに限り
リンクフリー。
「サカサマ テラ分館」
管理人:長四郎の
連絡先
sakasano-na@zeus.eonet.ne.jp
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析